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「ミラシドミファラシドミファラシ」は平調子 [音楽理論]

箏の調子で「平調子」というのがあります。これを洋楽的に覚える場合、「ミラシドミファラシドミファラシ」と覚えておくと融通が利いて便利です。箏の絃は13本ですからそれに対応する音の並びが低いほうから示されています。

これを途中で区切って「ミラシ・ドミファラシ・ドミファラシ」と読むと最初の3音以外はドミファラシの繰り返しになっていますので覚えやすいと思います。

それぞれの音が何度ずつ違っているかみてみましょう。度数を数えるときにはスタートの音も含めます。例えばミラの場合はE・F・F#(=G♭)・G・G#(=A♭)・Aという六つの音がありますので6度です。邦楽の数え方では5律の差ということになります。

すべての音を見てみますと、度数では「ミ6ラ3シ2ド5ミ2ファ5ラ3シ2ド5ミ2ファ5ラ3シ」、律の差では「ミ5ラ2シ1ド4ミ1ファ4ラ2シ1ド4ミ1ファ4ラ2シ」となります。

以後の説明はドレミの階名よりも音名のほうがわかりやすいと思いますのでアルファベットで書きます。

ところで、「EABCEFABCEFAB」に調絃することはまれで実際の演奏ではこれを移調して調絃しています。一番低い音を1尺8寸の尺八の筒音D(ドレミのレ)に合わせて調絃する場合の方法を説明しましょう。最初の音が決まったらあとの絃はそれぞれの度数(音律の差)に従って音の高さを合わせていきます。

Dを一の絃にとった平調子は低いほうから「D(6)G(3)A(2)A#(5)D(2)D#(5)「G」(3)A(2)A#(5)D(2)D#(5)G(3)A」となります。「」は第七絃、()内の数字は前後の音の度数です。

Gを一の絃にとった平調子は低いほうから「G(6)C(3)D(2)D#(5)G(2)G#(5)「C」(3)D(2)D#(5)G(2)G#(5)C(3)D」となります。

Cを一の絃にとった平調子は低いほうから「C(6)F(3)G(2)G#(5)C(2)C#(5)「F」(3)G(2)G#(5)C(2)C#(5)F(3)G」となります。

箏の楽譜で平調子と指示されていて弾く音の順に「七、七、八、七、七、八、七、八、九、八、七、八、七、六」となっていれば、この曲は「さくらさくら」です。(音譜の長さの表記は省略しています。)

弾く人から見て一番遠い位置にあるのが一の絃です。したがって、向こうから七番目の絃、七番目の絃、八番目の絃・・・というように順に弾いていくと「さくらさくら弥生のそーらーは」のメロディーになります。

つまり「さくらさくら」と平調子は相性がいいのです。弾く絃と拍子を間違えなければ誰が弾いても曲になります。だから箏の手始めの曲としてほとんどの教本に採用されています。

でも尺八の場合は1オクターブ12音のうちで指孔の全開・全閉の楽な操作で出せる音は5音だけであとの7音は特殊な指づかいやメリ・カリの組み合わせで音高を作らなければなりません。上記の「さくらさくら」にはどのキーにしても必ず特殊音符が出てきます。ですから尺八の初心者にとっては簡単な曲とはいえません。

箏の調絃はピアノの調律からちょっとずれている [音楽理論]

慣れた人が箏の調絃をするときは、調子笛や尺八の音を一つだけ聴いて一本の絃の音高を合わせ、あとはその絃を基準にして他の絃の音高を調整していきます。

慣れていない人や音高の違いに頓着しないひとは13本の絃を全部チューナーで合わせることがあります。これには純正律と平均律ほどの違いがあります。

一般的なチューナーはクロマチック型といわれ平均律の半音階で調整されています。だから、これに合わせて調絃すると平均律になってしまうのは当然のことです。

ところが、箏で古曲を演奏するのに平均律で調絃したのでは微妙に違った音の高さになってしまいます。そのために、「邦楽器専用チューナー」というものがありました。(過去形になっているのは、現在は市販されていないからです。)

seiko_st500_spc.jpg

邦楽器専用といいながらメーターの針を見ながら調整するクロマチック型と同じではないかと思ったら大間違いです。箏・三味線(三絃)の専用モードをもっておりまして、右側のツマミで根音(基音)を設定して左側のツマミで調子を選んだらチューナーのメーターはそれに対応するようになっています。

前日の稿で平調子のことに触れました。D音を一の絃にとったときは「D・G・A・A#・D・D#・G・A・A#・D・D#・G・A」と書きましたが、このままで調絃したらそれは平均律です。平調子の曲の演奏では#の付いている音を半音の10/100程度下げて調絃します。厳密にいうと10/100もちょっと違うようですが、「邦楽器専用チューナー」を用いればそこのところが正確に調整できるようになっています。

クロマチックと邦楽器専用の音律の違いについてはこのサイトの末尾に近いところに解説があります。これを見ると全部の音が違うという感じです。

こういうことを知らずに平均律だけにとらわれている人が混ざっていると悲惨な合奏になってしまいます。完全に響き合う状態を知らなければ違和感を持つこともないのでしょうが、一旦知ってしまうと響き合っていないときの気持ちの悪さといったらありません。

箏の調絃の実音サンプルがありました [音楽理論]

「美緒野会」という社中のサイトに、A=442Hzで調絃した箏の音を聞かせてくれるページがありました。

曲目別の調絃を紹介しているページもあります。箏の名曲「六段の調」を見てみると、六段の調/鶴の声/難波獅子/みだれ/八千代獅子/末の契りなどの曲名が並んでいてその下に13本の絃の音高が示された表があります。Gの音を一絃にとる平調子です。

その表の左側の「Click」の文字をクリックすると画面左下に音符のマークとファイル名が表示されます。これをクリックするとプレイヤーの画面が開いて一の絃の音から順に2回ずつ実音が鳴ります。文字表示はありませんので画面サイズを小さくして音高表を見ながら聞けるようにすると良いと思います。

一の絃よりも二の絃のほうが音が低くなりますが、これは一と五の絃をG4の同音にとって二の絃の最低音C3から順に上がっていく調絃になっているからです。

特に聞いて欲しいのは#のついた音です。絶対音感のある人だったらわかると思いますが平均律の音よりも若干低くなっています。これが三分損益の法(ピタゴラス律にほぼ一致)に基づいた邦楽の調絃です。

ということは、箏譜を五線譜に書き換えてピアノで弾いたとしても絶対に「六段の調」の響きにはならないということです。

「六段の調」は全音からピアノピース(№239)が出ていますが、これを弾いてみて箏の響きと違うと思った方は平均律とピタゴラス律の違いが聞き分けられているのかもしれません。


7孔尺八は平均律だった [音楽理論]

趣味の民謡尺八サークルで箏曲の「三段の調」を箏と合奏しているときに、不思議な体験をしました。

合奏は箏一面と尺八数名です。尺八で三曲経験者はreizanだけなので、reizanが7孔の塩ビ管尺八を使ってい全体をリードしました。半音も大きな音が出せるように7孔尺八を使いましたが、ほかの人は竹管の5孔尺八です。

合奏練習が始まって三つ目の音で違和感を感じました。それもreizanだけが外れているようです。その後もツの半音(E♭、琴古流ではツの大メリ)の箇所で違和感を感じます。 

三つ目の音は箏がCで尺八がE♭の音でした。CとE♭は3律差ですから短三度の協和音です。ハモらないとおかしいのですが実際には気持ちの悪い響きになっていました。

途中からはツの半音のときには少しあごを引いてメルようにし、尺八の音を低くするようにしたらよくハモリました。

よく考えてみたら、最近のブログで取り上げた三分損益と平均律の違いを実践してしまったのかもしれません。7孔尺八の補助孔は平均律に調律していますので三分損益法で調絃された箏の音とはそのままでは良く響き合わなかったのかもしれません。

まだ、本当の理由は分からずスッキリしていませんが、新たな研究課題ができて楽しみです。


ジャズの「ブルー・ノート・ペンタトニック」が尺八の「ロツレチハ」と同じという不思議 [音楽理論]

NHK・BShiで坂本龍一さんの「スコラ特別講座(3)“音”で楽しむスコラ・ジャズ編」を見ていたらナレーションでブルー・ノートの説明がありました。

西洋音楽のハ長調の場合の基本的な音階は「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」ですが、ジャズのブルー・ノート・スケール(音階)では「ミ♭」と「シ♭」が加わって「ド・レ・ミ♭・ミ・ファ・ソ・ラ・シ♭・シ」となり、このときのミ♭とシ♭がブルーノートです。

また、ブルー・ノート・スケールのなかでも使用頻度の高い五つの音(フレーズの基本として使われるブルー・ノート・ペンタトニック)が「ド・ミ♭・ファ・ソ・シ♭」だとも言っていました。

「ド・ミ♭・ファ・ソ・シ♭」をアルファベットに置き換えると「C・E♭・F・G・B♭」です。これは2尺管尺八の基本音の「ロ・ツ・レ・チ・ハ」(「ハ」は琴古流では「リ」・「ヒ」)に該当します。上に長2度(2律)移調すると「D・F・G・A・C」になりますが、これは1尺8寸管尺八の「ロ・ツ・レ・チ・ハ」です。

ということはジャズ(ブルース)と尺八は何か通じるものがあるかもしれません。これからの研究課題ですが興味深いことです。


ピアノの楽譜から箏譜に直す方法 [音楽理論]

「ピアノ譜を箏に直す」という検索ワードでこのブログを訪ねてこられた方がいらっしゃいました。リクエストにお応えして手順をご紹介します。素人のreizanが考えたものですからもっと良い方法があるかもしれませんが一つの参考としてご覧ください。

003.JPG

例題は、よく知っている人がピアノソロ用にアレンジしたドリカムさんの「LOVE LOVE LOVE」です。それをreizanが箏譜に書き換えました。

楽器の構成は、調絃の異なる普通の箏が二面と、低音部を担当する「17絃」(これが楽器名です。)です。

《前奏の部分》


箏譜はタブラチュアーです。音の高さではなく絃の順番を表す数字を使います。一絃から十絃まではそのまま漢数字で表します。それ以降は、箏の場合は11=「斗」(と)、12=「為」(い)、13=「巾」(きん)と書き、17絃の場合は十までは漢数字で11絃以降は下一桁だけとって算用数字で1、2、3、4、5、6、7と表します。

結論から先に書きますと「LOVE LOVE LOVE」の箏譜の調絃指示は次のとおりです。これはオリジナルと同じキーです。ただし、サンプル音源では尺八奏者の方が自分の1尺8寸管と合わせたいというリクエストで下記から全体を半音下げた調絃になっています。

第一箏の調絃は、「一=4F#、二=4G#、三=4A#、四=5C、五=5C#、六=5D#、七=5F、八=5F#、九=5G#、十=5A#、斗=6C、為=6C#、巾=6G#」

第二箏の調絃は、「一=4C、二=4C#、三=4D#、四=4F、五=4F#、六=4G#、七=4A#、八=5C#、九=5D#、十=5F、斗=5F#、為=5G#、巾=6C#」

17絃の調絃は、「一=1G#、二=1A#、三=2C、四=2C#、五=2D#、六=2F、七=2F#、八=2G#、九=2A#、十=3C#、1=3D#、2=3F、3=3F#、4=3G#、5=3A#、6=4C、7=4C#」

ちょっと逸れますが、箏・17絃を調絃するときは、いつもの三分損益法で調絃してはいけません。面倒ですがチューナーを使って一音ずつ平均律に合わせます。

009.JPG

「家庭式」で書いた楽譜です。縦に読みます。縦の一列ごとがパートに分かれています。横向きの二重線のあいだに挟まれた四つの四角のそれぞれが1拍です。途中の仕切り線が半拍の境目を表しています。

第一箏を見てみますと、最初の「三」が四分音符で1拍。次の「一、二」は半拍のますの中に二つの音が順に書かれていますのでそれぞれが十六分音符で合わせて半拍になります。その後の「三、四、五、六、四」がそれぞれが半拍なので、ここまでで1小節になります。

第二箏の2拍目の頭は休符で半拍休みになります。4拍目の頭の三角形に点は延長記号で、前の「六」が1拍半になります。5拍目は四分音符ですが「四、八」を同時に弾きます。

これを「正派」の書き方にすると下のようになります。箏譜の書き方としてはこのほかに「山田流」の横書き譜があります。いずれもタブラチュアーの数字譜(タブ譜)ですが音の長さの表し方にそれぞれの工夫があります。

003.JPG


さて、ピアノ譜を箏譜に直す方法です。

13絃の音域はreizanの実測では、3Cから6Dまで楽に出せます。小柱を使えば高いほうは7Cぐらいまでできないこともありません。17絃は可動式のねじと柱を併用しますので音域幅の調整が可能です。普通に使うのは2Cから4Eぐらいが多いようですが、下は1Gも可能です。

箏と17絃を合わせた音域が1Gから7Cぐらいで、88鍵のピアノの音域が0Aから8Cですから、上下に1オクターブずつぐらい足りないところがありますが普通にアレンジされたピアノソロならほとんどが箏・17絃でカバーできます。

まず、五線譜上の一番高い音と一番低い音を見つけます。次にチェック表を作ります。白紙の上のほうに横線を引きます。それから1センチ間隔ぐらいで平行線を引けるだけひきます。平行線の左端から1センチぐらいのところに縦線を1本だけ引きます。

一番上のコの字形になったところに一番高い音の記号を書きます(例えば、「6G#」のように)。それから下に最低音(例えば、1G#)までを半音刻みで書いていきます。これがチェック表です。足りなかったら紙を足して全音域をカバーします。

準備が出来たら、五線譜の最初から全部の音の数をチェック表のそれぞれの音の高さの欄に記入していきます。これが終わるとすべての音が均等に使われていないことが一目瞭然です。よく出てくる音を開放絃にとってやったとして、それ以外の音が押し手でカバーできるかどうかを考えます。


次に、箏・17絃への割り振りです。ベースラインは17絃にという原則で割り当てますが、絃が足りないときは高い音を箏にまかせます。

二面の箏への割り振りは、原則として、高音を一箏に低音を二箏にという感じにします。ただし、二箏が内声だけになると演奏者としてはつまらないので二箏にも少しメロディーを担当してもらうように配慮します。

また、一人では弾けないフレーズを箏二面に分けるときには弾けない音だけを相手に任せるのではなく、それぞれがテンポ感を感じられるように音数やリズムを考えることも必要です。

一応、譜割りができたら実際に弾いてもらって、演奏困難なところを微調整して完成となります。

≪終りの部分≫

尺八用に、Excelで協和音一覧表を作ってみました [音楽理論]

趣味の民謡尺八サークルで演歌の伴奏をすることがありますが、今までは歌とユニゾンで吹いていました。しかし、それでは面白くないので合いの手を入れたりロングトーンを使って伴奏らしく吹こうという意見が出てきました。

簡単な編曲になるのだと思います。尺八の准師範試験を受けるときに、一応、邦楽の楽理を勉強しましたが、普段はあまり使う機会がなくほとんど忘れてしまっています。

そこで、Excelを使って協和音一覧表を作ってみました。

kyowaon.jpg

メロディーに出てくる音を一覧表の基音の欄で見つけたら、同じ行に書いてある音を同時に吹いたときに心地よい響きが得られるというものです。なかでも完全四度と完全五度はとくに良い響きになります。

この表を使って何曲か作譜の練習してみようと思います。

同じ内容をアルファベットで表すと次のようになります。

kyowaon2.jpg

よく知っている人にこの表の話をしたら賛同してくれました。和声の部分は音楽の勉強の中でも面白いところだから、次はコードの勉強をして、その次は代理コードまで勉強すると良いとアドバイスをもらいました。

よく知っている人の所属しているグループでは全員の頭の中に一覧表が入っていて、新しい譜面が配布されたら協和・不協和の関係を頭の中で瞬時に判断していくそうです。

そこまでやると脳が壊れてしまいそうだからreizanはのんびりやります。


「歌い手のキーに最適な尺八を選ぶための一覧表」を作ってみました [音楽理論]

人の歌声のキーは半音を含む「ド」から「シ」までのどれかに区分できますから、歌うときのキーの数は全部で12です。この12のキーに対応して尺八伴奏をするとき、一番単純な方法はそれぞれのキーに合う長さの違う尺八を12本持つことです。例えば、正律管で1尺2寸管から2尺3寸管まで1寸きざみの尺八を持つと12のキーに完全に対応できます。

しかし、実際にこんなことをしている人はほとんどいません。楽譜のほうを移調して合わせます。では、1本の尺八ですべてのキーに対応できるかというと、運指のやりにくさが伴うのでそれは無理です。(詳細は後述します。興味のある方はご覧ください。)

一般的なのは、尺八の筒音を主音とする「ロ調子」と、その5律下(7律上)の「チ調子」で対応する方法です。二つの調子の差が6律だったら最低の6本で全てのキーをカバーできますが、5(7)律差では2本の尺八で「ロ調子」と「チ調子」が同じ高さの音になるケースがでてきますから7本の尺八が必要になります。

saiteki shakuhachi.jpg

それを一覧できるようにしたのが上の表(クリックで拡大)です。表の見方は、例えば、歌い手のキーが六本(D音)の場合、「六本」の行を右に見ていき、一番吹きやすい「ロ調子」を表す「ロ」から上にたどって「1尺8寸」管が良いというふうに見ます。

本数の「一本」の下は「水一本(みずいっぽん)」から順に数が増えていきます。負の数字の表し方と同じです。なお、キーの数は12ですから男性の低い声の「水一本」と女性の高い声の「十二本」はオクターブ違いの同じ音になります。

7本の尺八と言いながら表は8本の尺八になっています。両端のどちらか片方は無視していただいて結構です。2尺1寸から7本を揃えると、現代曲に多い2尺1寸管と1尺8寸管の合奏曲が楽しめますので三曲系の人はこちらが良いと思います。一方、指の短い人は1尺4寸管から7本を揃えたほうが運指が楽です。そういうことも考えて表を作りました。

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ここからは日本民謡の音階に関する話です。ネタ元として「演奏家のための 日本音楽の理論と実践」を参考にさせていただきました。これはNHK邦楽技能者育成会で使われていたテキストをまとめたものでA4版400ページもあります。市販はされていないようです。発行されたときに、ある団体を通じて有償で入手したと記憶しています。

003.JPG

日本音楽の音階は「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の7音音階ではなく、5音音階です。そのパターンはいくつかありますが共通する特徴は、オクターブを見るとその中に、完全四度が2つあってその間に長2度を挟んでいることです。これを律差で書くと「5・2・5」です。

律(半音)の差が5になっている場合が完全四度で、律差が2のときが長2度です。日本音楽の音階は、1音目と3音目の間が完全四度で、3音目と4音目の間が長2度、4音目と1音目のオクターブ上の間が完全四度になっています。これは日本音楽全体に共通です。

しかし、沖縄民謡とそれ以外の民謡はちょっと聴いただけで違うことが分かります。それは2音目と5音目の位置がそれぞれ異なっているのです。

沖縄民謡では1音目と2音目と3音目の律差が「4・1」、4音目と5音目と1音目のオクターブ上の律差も同じく「4・1」です。あいだに長2度を挟むと「4・1・2・4・1」になります。この律差の一例を挙げてみますと、「ド・ミ・ファ・ソ・シ」の音だけを使って曲を作ると沖縄っぽくなります。

沖縄以外の民謡音階は律差でいうと「3・2・2・3・2」です。これを尺八のロツレチで表すと五音音階は、

「ロ」が主音のとき、「ロ・ツ・レ・チ・ハ」(特殊音符なし)

「チ」が主音のとき、「チ・ハ・ロ・ツ・レ」(半音下げの特殊音符が一つ)

「レ」が主音のとき、「レ・・ハ・ロ・ツ」(一音下げの特殊音符が一つ)

「ハ」が主音のとき、「ハ・・ツ・レ・」(特殊音符が二つ)

ツ」が主音のとき、「ツ・レ・チ・ハ・ロ」(特殊音符が二つ)

「ツ」が主音のとき、「ツ・・ハ・」(特殊音符が三つ)

演奏しやすい順はというと、「1.ロ調子、2.チ調子、3.レ調子、4.ハ調子、5.ツ調子、6.ツ調子」になります。なかでもロ調子、チ調子の運指が特に楽です。逆にツ調子では絶対にやりたくないです。

だから上の一覧表では、「ロ調子」と「チ調子」だけで何本の尺八がいるかということを考えましたが、「レ調子」や「ハ調子」も使うようにすればもっと本数を減らすことができます。



「五線譜の調号の数から、オリジナルキーで吹ける最適尺八を選ぶ早見表」をつくりました。 [音楽理論]

henkanki.jpg
《変換器のイメージ。黄色の円盤を回転させて使います》

五線譜から尺八譜への変換方法については以前に報告しましたが、実際に変換作業をするときに面倒なのが最適な尺八の長さを見つけることです。

今までのやり方は、チェック表を使って五線譜上に出てくる音を全部調べて、できるだけ半音(尺八の特殊音譜)が少なくて吹きやすい長さを探していました。

しかし、この作業がつらくて変換作業が進みませんでした。最近見つけた「河童」さんのブログに、「唄い出しのピアノのキーから、対応する尺八を選ぶ早見表」というのが紹介されていたので、それに触発されて同じ趣旨の表をreizan自身が使いやすいように作ってみました。

長調でも短調でも対応する尺八の長さは同じ結果になりましたが、主音は異なります。

tyogo.jpg
《左クリックで拡大》

尺八で吹いてみたい五線譜があったら、
  1. 「#」または「♭」の数をかぞえ
  2. 「歌いだしの音」と「最後の音」の高さを確認して、上の表を見ます。
例えば、♭が五つで、出だしがA#だったら、短調のほうに該当する箇所があります。その下に書いてあるのが、オリジナルキーで吹いたときに、吹きやすい尺八の長さです。
しかし、実際の曲には例外もあります。そのときは歌の最後の音と調号の数を手がかりにしてみてください。

実際にやってみましょう。例題は「80日間世界一周」のフルートのパート譜です。
世界一周.jpg
#が五つで、出だしが「B」です。上の表をみたら、長調のほうにありました。1尺9寸管が良いようです。1尺9寸管はD♭・C#管だから、変換器の「D♭・C#」を「ロ」に合わせてつかいます。
では、終りはどうかと見てみたら、面白いことに途中で転調されていました。ですから、二段階で考えないといけません。
世界一周1.jpg
転調の前は「B」で終わっていますので前半は1尺9寸管でOKです。

転調後は、#が四つで、出だしが「E」となります。尺八の持ち替えが必要かと、上の表を見てみたらラッキーなことにこちらも1尺9寸管でOKです。
世界一周2.jpg
念のために終りの部分を見てみたら「E」で終わっています。
ここまで確認できたら、あとは自信を持って変換作業をします。

なお、参考までに不都合な変換の例を示します。
この曲を1尺8寸管でキーを変えずに演奏しようとしたら、音階を構成する七つの音が、曲の前半は全部が半音の運指になり、後半は六つの音が半音になります。このようにして作られた音譜は最悪で、ただ演奏者いじめをしているようなものです。

でも、藤原道山さんの「UTA」というCDに収録されている「紅葉」は、欲しい音色を得るためにほとんどの音符が半音だと、ある講習会でご本人が仰っていました。



この表を作るために全部の音階についてチェックをしました。その一例が下の表です。
半音数確認表.jpg

三味線の調絃って、どうやるの [音楽理論]

三味線は、「本調子」(ほんちょうし)、「二上り」(にあがり)、「三下り」(さんさがり)などの調絃の指示にしたがってチャッチャと調絃されます。いつも不思議だなと思いながら見ていたのですが、三味線を弾く方にやり方を聞いてみてようやくわかりました。

「本調子」、「二上り」、「三下り」という言葉は聞いたことがあっても意味が分からない方が多いと思いますので説明させていただきます。
三味線の絃は3本で、太い一の糸(構えたとき、顔に近いほう)が基準になります。

例題として、一の糸を「D」にとることにします。(実際には「C」にあわせたり、「G」にあわせたり、「A」にあわせたりすることもあります。)

  • 「本調子」は、「D・G・D」に調絃します。律差は「5・7」です。ほかの調子のベースになるので、本調子といいます。
  • 「二上り」は、本調子の二の糸を2律あげて「D・A・D」に調絃します。二の糸が1音あがっているから、二上りです。律差は「7・5」です。
  • 「三下り」は、本調子の三の糸を2律下げて「D・G・C」に調絃します。三の糸が1音下がっているから、三下りです。律差は「5・5」です。
では、「本調子」の調絃をしてみましょう。
(絃を押さえる勘処は、開放絃を0として、順に「1・2・・3・4・5・6・7・8・9・・0・1・2・3・・4・5・・・」と呼びます。)

一の糸を、調子笛やチューナーで「D」に合わせます。
一の糸の4の勘処(3と4の間に#があるので実際は5番目)が「G」ですからここを押さえながら、二の糸の開放絃と交互に弾きながら二の糸の音程を合わせます。

素人考えでは、4の勘処を押さえる時に位置がずれていたら音程が違ってしまうのではないかと思ったのですが、ちゃんと対策がしてありました。

三味線の棹(ネックの部分)は一本に見えますが実は3本の木をつないでいるのです。そして糸巻き寄りの継ぎ目が4の勘処と一致するように作られています。これだったら間違えようがありません。
013.JPG
《つなぎ目》

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《外した状態》

なお、このときに二の糸の開放絃を弾いてチューナーで測っても「G」とは一致しません。表示は「G」と出ますが針は中央からほんの少し低いほうにはずれます。ということは三分損益法(ピタゴラス律)の調絃です。
三本の絃を一本ずつチューナーで調絃するようなことはしません。それでは平均律になってしまいます。

三の糸は、二の糸の6の勘処(3と4の間に#があるので実際は7番目)が「D」になりますのでこれと合わせます。
最後に、一の糸と三の糸がオクターブで響き合うかどうかを確認します。

そこでふと思ったのがギターの調弦のことです。ギターの一般的な調弦は低いほうから「E・A・D・G・B・E」に合わせます。最初の一本だけ調子笛やチューナーで決めますが、後は次々に音高が確定した弦を使って次の弦をあわせます。

そうするとギターもピタゴラス律?いいえ、そんなことはありません。ギターのフレットが平均律で配置されているのでフレットを基準にすると自然に平均律になってしまうのです。

では、ノン・フッレットの弦楽器ではどうかとバイオリンについて調べてみました。そこで分かったのはバイオリンの場合はピタゴラス律で調律しているということです。オーケストラの楽器は、弦楽器はもちろん、木管も金管もピタゴラス律での演奏ができるのだそうです。平均律の音しか出せないピアノと合奏するピアノ協奏曲のときは平均律に合わせます。

バイオリン関連サイトに面白いことが書いてありました。辛口ですが真実に迫る見解だと思います。

『ヴァイオリンを弾いているときというのはどんな人でも常に音程を外しながら弾いているもので、良い音程で弾くというのはどれだけ自分の音程を把握し、いかに その外し幅を小さくするか、ということにかかっています。つまり外した音を正確に聞き分ける耳と、安定した フィンガリングを行う左手の両方が備わって初めて良い音程が得られるのです。ちなみに手に対して耳が鋭いと 自分の音程は常に酷いものに聞こえ苦痛ですが、音程が向上する良い状態ともいえます。』



「音楽の拍子記号」は分数では解けない [音楽理論]

年配の尺八愛好家が苦労するものの一つに拍子があります。

都山流の場合は流祖先生が五線譜の良いところを取り入れた記譜法ですから拍子記号に馴染みやすいのですが、民謡は大半が四分の二拍子ですし、古典本曲にいたっては拍子の概念そのものがないので、そういうのに慣れた人には特に取っ付きにくいようです。

それともう一つ拍子記号の意味を誤解している人もいます。「4/4」は1とか、「2/4」は0.5とは考える極端な間違いはないようですが、「3/4」と「6/8」とか、「4/4」と「2/2」は、それぞれがイコールだと間違えている人はいます。

実際のところは拍子記号を約分することはできません。拍子記号は分数ではないのです。

「/」の右側(「/ココ」)の数字は1拍の音価(長さ)です。
そして、「/」の左側(「ココ/」)の数字は1小節の拍数です。

だから、上記を読み解いていくと
「3/4」=四分音符を1拍として、1小節に3拍
「6/8」=八分音符を1拍として、1小節に6拍
「4/4」=四分音符を1拍として、1小節に4拍
「2/2」=二分音符を1拍として、1小節に2拍
となります。

拍子_0004.jpg
「3/4」、「3/8」、「3/2」は演奏上同じ結果になります。「4/4」、「4/8」、「4/2」も同様です。
つまり分数で云うところの分子側の数字が同じであれば単純拍子の場合は同じ結果になります。

拍子_0003.jpg
しかし、6拍子の場合は、3拍子を二つ連ねたということではありません。これは2拍子なんです。「6/8」は本来は「付点四分の二」という拍子なのですが整数で表す慣習になっていて「6/8」と表します。

付点四分音符は八分音符三つの音価ですから、八分音符三つを1拍として1小節に2拍というふうにみます。だから、ズン・チャッ・チャッが1小節に二つではなく、ズン・ズン・ズン・チャッ・チャッ・チャッで1小節です。

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reizanが琴古譜に書き直した「三の民謡調(みっつのみんようちょう)」について、民謡尺八サークルの仲間から、拍子記号が間違っているとの指摘を受けました。二分音符がベースになっていないから「2/2」ではなく「4/4」と書くべきだとの指摘です。確かに、小学校か中学校の音楽の授業でそのような説明を受けた記憶があります。しかし作曲者が指定していることなので弱りました。

拍子_0002.jpg
「春の歌」は「2/4」拍子の曲ですが、四部音符はあまり出てこず八分音符が目立ちます。前記と同じ理屈をつけると拍子記号は「4/8」でなければなりません。しかしそれはちょっと違うようです。

二つの譜を見ると、「三の民謡調」と「春の歌」の譜形が似ていることが分かります。「春の歌」の八分音符を四分音符というようにすべての音価を倍にすると同じような記譜になりそうです。
要は、1小節の中身が2拍なのか4拍なのかというところがポイントのようです。

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《reizan所有のCDジャケット》
拍子といえば「変拍子」というのもあります。有名なのはDave Brubeckの「TIME OUT」に収録されている「TAKE FIVE」が「5/4」拍子です。山本邦山さんの「TAKE FIVE」がここにありました

楽譜を見るまでは小節から音がはみ出してしまっているのではと思っていましたが、1小節に四分音符が五つということがわかって納得しました。

5拍子を演奏する場合のリズムパターンは、「12345」と単純に刻むほか、「3拍+2拍」と「2拍+3拍」があります。「TAKE FIVE」の場合は「3拍+2拍」で演奏されています。

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同じアルバムの1曲目の「BURE RONDO A LA TURK」(トルコ風ブルーロンド)は「9/8」拍子です。これは「2+2+2+3」と「3+3+3」で演奏されています。途中に「4/4」拍子が入りますが、急に緊張感が解けたような感じになります。

別の例ですが、たった9小節の間に「10/8」→「9/8」→「6/8」→「10/8」→「9/8」→「6/8」→「12/8」と拍子が変化する曲がありました。
拍子_0005.jpg


三三七拍子は、何拍子 [音楽理論]

応援団などでお馴染みの「三三七拍子」のことですが、これを「三拍子+三拍子+七拍子」と思ったら間違いです。正しくは四拍子です。それぞれの後に一拍の休止があるんです。実際にはそんなことは知らなくても正しく打てますが、音楽を勉強する上では押さえておきたいことです。

どうなっているかというと、|123|123|1234|567|の形になっています。ちょっとやってみると実感できると思います。

|123|123|1234567|では、13回連続して叩いているだけですから三三七拍子のリズムにはなりません。

ということをNHKの「どれみふぁワンダーランド」で云っていました。この番組は、「シャボン玉ホリデー」や「夢で逢いましょう」に、音楽教養の要素を加えたような番組で、最近の音楽バラエティ番組では出色だと思います。
2011.3で終わってしまったのが惜しまれます。


「音楽の正体」を見つけました [音楽理論]

「音楽の正体」の何を見つけたかというと動画があったのです。それも誰でも見られるネット上に。

そもそも「音楽の正体」とは何かというと、渡邊健一さんの原作の、フジテレビで1993年から半年にわたって深夜に放送された音楽理論の番組です。

深夜に理論?と不思議に思われるかもしれませんが、内容はバラエティーの要素が入った面白いものでした。と言っても、実はreizanはテレビ放送の方を見たことがありません。渡邊健一さんの同名のタイトルの著書を買ったときには番組が終了していました。

音楽の正体.jpg

人に好かれる曲というのは、どういうことで好かれるのかということをいろんな切り口から分析して、楽しくわかりやすく解説してくれているのです。

特に印象に残っているのは、「1オクターブの跳躍」と「クリシェ」です。オクターブの跳躍が出てくる曲といえば、「星に願いを」や「虹の彼方に」や「大都会」の出だしが有名です。大都会の出だしの「アー、アー」はハイトーンボイスで、いきなりオクターブ跳躍するのですからインパクトがあって当時かなりヒットしましたね。

「クリシェ」というのは、フランス語で、常套句、決まり文句というような意味らしくて否定的な意味に使われることが多いらしいのですが、音楽関係ではコード進行をつないでいくときにコードの中の1音を半音又は1音ずつ上昇させたり下降させたりするコード進行のことをいいます。

知らないうちにこれの魔力に取り込まれている人は多いものです。クリシェを使っている曲は数多いのですが、よくご存知の曲ではドリ・カムさんの「LOVE LOVE LOVE」があります。

この曲のコード進行を見ていくと、「ただ伝えたいだけ」の部分のコードはオンベースコードになっているのですが、ベースに着目すると、D#・D・C#と半音ずつ下っています。また、「ねえどうして涙が出ちゃうんだろう」の「ねどうして」の部分もA#・A・G#と半音ずつ下っています。

クリシェを聴くと母親の胸に抱かれた赤ん坊のように心地よい気持ちになるのだそうです。しかし、クリシェだらけの曲だとそれもまたつまらなくなりますので、目立たないようにそっと忍び込ませておくのだそうです。

本の中では、この部分がテーマに該当していると楽譜を掲載してくれているのですが、ロツレチ譜に慣れた人にはちょっとわかりにくい部分です。

テレビ番組では、これが音と楽譜を同時に提示してくれていたというので観たかったのです。そんな過去の番組を見つけました。
下記は一例ですが、ここに入っていけば芋づる式にほかの放送日のも探せると思います。

http://www.youtube.com/watch?v=5hmjt6L9hD4 音楽の正体 日本音楽とは何か(1/3)

話は逸れますが、これをアップしている人の動画集の中に「キャロル・キングの初級ソングライティング」というのもあります。これも楽しくて必見です。即席で曲をつくりながらハモリまで付けていくのには参ってしまいました。


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「移動ド」が簡単にわかる方法 [音楽理論]

音楽のドレミには、調号によって「ド」の位置が変わる「移動ド」と、どんなときでも同じ位置(普通はト音記号の五線譜の下第一線)を「ド」とする「固定ド」の二つの方法があります。

コーラスなどの場合は「移動ド」が便利で、楽器の演奏の場合は「固定ド」が便利だといわれています。

「固定ド」は位置が変わらないのだから間違えようがありませんが、「移動ド」は調号の数によってその位置が変わるためちょっと面倒です。

最近、そんな「移動ド」がわかる簡単な方法を教えていただきましたのでご紹介します。

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《画面左クリックで拡大》

上に一覧表を作ってみましたが、小さすぎてよく見えないので、#が三つの場合と、♭が三つの場合を例に説明してみましょう。要領さえわかればあとはどんな調でも平気です。

「移動ド」の位置がわかる方法を説明します。キーポイントは次の言葉に尽きます。
  • 一番右の#の位置が「シ」になる。(シャープだからシと覚えましょう。)
  • 一番右の♭の位置が「ファ」になる。(フラットだからファと覚えましょう。)
上で使った図を再掲しますので見てください。

イ長調.jpg
一番右の#が上第一間にありますからここが「シ」です。シの上がドですから上第一線が「ド」です。第二間はオクターブ下の「ド」になります。長調の場合は「ド」の位置が音名になります。
日本音名のハニホヘトイロで見ると「イ」の位置がドになっていますので「イ長調」です。

変ホ長調.jpg
♭の例では、一番右の♭は第二間ですからここが「ファ」になります。ファミレドと四度下った位置がドになりますから「ド」は第一線です。この位置はハニホヘトイロで見ると「ホ」の位置になります。
オクターブ上の第四間を見てください。このドには♭が付いています。だからホ長調ではなく「変ホ長調」と呼びます。
#系でドの位置に#がある場合は「変」の代わりに「嬰」の字を付けます。

何故こうなるのかと考えると難しくなりますが、単純に覚えてしまえば「移動ド」は簡単に見分けることができます。

はずむ演奏 [音楽理論]

民謡の伴奏をしていると、なかには、はずむように吹かないといけない曲があります。
はずむとは、擬音語で表すとチャカ・チャカ書いてあるのをチャカ・チャカと演奏するイメージです。

これがなかなか手ごわくて、「軽くはずむ」という演奏上の指示が書いてあってもギクシャクしてはずめない人がいたりします。

そこで一寸研究してみました。サンプル曲は「朝の出がけ」という民謡の出だしの部分です。(琴古流の音符で書いています。)

はずみ音サンプル.jpg
右端が元の楽譜です。はずまずに演奏すると次のような演奏になります。

《はずまない演奏》

大半が8分音符ですが、はじめに「軽くはずむ」と書いてありますから、はずむように演奏しなければなりません。慣れている人には本当になんでもないことですが、慣れない人にとっては難しいようです。

そういう人たちのために、はずむところがわかるように記譜することがあります。真ん中がそれです。でもここに落とし穴があって、実は真ん中の譜のとおりに忠実に吹いてもはずんだ感じは出ないのです。

はずんだ感じを出すためには左端の譜のように吹かなければなりません。しかし、三連符がたくさんあると譜が見にくくなるためかこういう記譜にはお目にかかりません。

実際の音を比較してみましょう。

《はずみ譜どおりの演奏》

《本当にはずんでいる演奏》

どちらも同じに聞こえた人は耳が慣れていないからです。それぞれ最初の1小節を比較してみますと、

前者は、「ロオオツ ロオオリ」
後者は、「ロオツ ロオリ」

と演奏しており明らかに違います。この二つを一緒に聴いてみましょう。

《はずみ譜どおりと正しい演奏の比較》

偶数番目の音が微妙にずれて聞こえるのがわかりましたでしょうか。今はわからなくても何回もチャレンジしていたら自然にわかるものです。気長に続けましょう。



耳コピ [音楽理論]

民謡尺八サークルの来年2月の演奏会の曲目中に「海の匂いのお母さん」という演歌の曲があがっています。reizanは聴いたことのない曲です。

他の方が採ってくれた耳コピ譜がちょっと違っているようなので、自分用に耳コピをしました。(これにも訂正が入りました。

海の匂いのお母さん.jpg
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調号がなくて、「A(ラ)で」終わっていますから典型的なイ短調の曲になります。 

五線譜で書いてあるのはパソコンで音を再生しながら音程を確認していく(上の楽譜は写真です。音は出ません。)ためです。これをあとから尺八譜に直します。

さて、これを何寸管のキーで書くかというのがポイントです。採り方を間違えるととても吹きにくい譜になってしまいます。
ここが思案のしどころです。

最低音と最高音を見てみますと3E~5Fですから2オクターブぐらいです。 尺八の音域が2オクターブちょっと(プロの場合は3オクターブ近く)ですから一応できそうです。

しかし、1尺8寸管で吹こうとすると、元々4D(無理しても4C)から上しか出ませんので3Eの音は絶対に無理です。そうなると1オクターブ上げて吹くということになるのですが、今度は最高音の5Fが都山流の運指では「ツの大甲」となります。このツの大甲というのはプロでも正しい音程で吹くのが難しいと云われている音ですから、素人が吹くにはちょっと無理があります。

そうなると管の長さを替えるしかありません。2尺8寸管(約85センチ)の筒音が3Eですがこんな尺八は普通には吹けませんし誰も持っていません。というか全員が持っているのは1尺8寸管と1尺6寸管ですから、1尺6寸管でどうかということを検討するしかないのです。

1尺6寸管で楽に吹ける音程は4E~6F#ですから、1オクターブ上げて吹けば「海の匂いのお母さん」の3E~5Fを完全にカバーできます。
あとは尺八の半音の具合を確認します。音程はおさまっていても半音だらけでは吹きにくくなってしまします。幸いなことにこの曲の場合は「ツの半音」と「ハの半音」だけですから、この点もOKです。

五線譜から尺八譜への変換には、前にも紹介した変換グッズを活用します。

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海の匂いのお母さん(尺八譜).jpg
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耳コピも終わったのでそろそろ年末の大掃除にかかろうと思います。




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耳コピに直しが入りました [音楽理論]

先日耳コピをした「海の匂いのお母さん」の楽譜を、よく知っている人にチェックしていただきました。結果、すごい直しが入りました。赤枠が訂正か所です。
海の匂いのお母さん2.jpg

2番と3番の間の間奏と後奏は見ていただいておりませんので、それを差し引くと 半分ぐらいかそれ以上間違っていたことになります。

最初のリピート記号のところから歌が始まります。歌の部分は印刷物からそのまま写していたのですが、チェックしてくれた方が音感の良い人で歌手のタメの部分もしっかり採譜してくれています。

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《オリジナル楽譜》

尺八伴奏は歌とまったく同じメロディーを吹く必要もありませんがここは折角ですので直しの部分を訂正して作り直すことにしました。下記が修正版です。

海の匂いのお母さん_0001.jpg

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尺八譜も修正しました。
海の匂いのお母さん(尺八譜)_0001.jpg
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「チャンカチャンカ」は三連符が二つではずむ [音楽理論]

reizanが参加している趣味の民謡尺八サークルではほとんどの曲を琴古流の楽譜で演奏しています。
本来の琴古譜には小節線がありませんが、それに小節線を入れた米谷譜というのがあってこれを多用しています。

ところで、この米谷譜でメンバーの解釈がバラバラだったのが「軽くはづむ」という指示の解釈です。

008.JPG

メンバーの中に吹奏楽のベテランがおられて、いつも、「この曲は弾んでください」と声をかけるのですが弾んだ演奏にならない人が何人かいます。

そこで、初心者の人が揃っているところで、reizanがお願いして一人ずつに唱譜をしてもらいました。(唱譜とは、音譜の文字をリズムどおりに声に出して読み上げることです。)

唱譜ができればその通りに吹くことができますから、先ずは唱譜ができるかどうかのチェックです。

唱譜をしてもらった結果ですが、一人の例外もなく、出だしのところを「つーつれ」と唱譜しました。
「つーつれ」では譜の通りですから全く弾んでいません。

この曲には「軽くはづむ」という指示が付いていますから、唱譜としては「つーんつーれ」になります。
この曲は2/4拍子ですから、「つーん」が1拍、「つーれ」が1拍になります。

さらに細かく見ていくと、「つーん」の「」「」「」の長さはすべて同じです。つまり、1拍が三つの同じ長さの音で構成されているという三連符です。「つーれ」も同様に三連符です。

reizanは、前から、「軽くはづむは、チャンカチャンカと演奏すればいいんですよ。」と教えてあげていましたが、意味が理解されにくかったみたいです。

「チャンカチャンカ」というと弾むような感じがすると思います。これを分析すると、前の「チャンカ」が1拍、後の「チャンカ」が1拍です。さらに「チャンカ」を細かく見ると「チャ」「」「」の長さはすべて同じですから三連符です。
これを手拍子でやってみてください。「ン」は音を出しませんから「チャ」と「カ」のときだけ手を打ちます。これを連続してやると弾んでいますよね。

ここまで分っていただけたら、次に実際の演奏の仕方を説明しましょう。

「つーんつーれ」の「つーん」は、「ツ」を1拍の三分の二の長さ吹いて、「ん」のところ(1拍の三分の一)は音を出さない。
「つーれ」は、「ツ」を1拍の三分の二の長さ吹いて、「レ」を1拍の三分の一の長さ吹く。
という演奏をすると弾んだような演奏になります。

4小節目の「ロ ロ」を見てみましょう。

010.JPG

これも弾まなければなりませんから「ろーろー」ではダメです。「ろーんろーん」と吹きます。「ロ」を1拍の三分の二の長さ吹いて「ん」のところは音を出さないという吹き方になります。

この稿は尺八をやっていない方にはチンプンカンプンだったかもしれません。でも、なかには目から鱗の方も一人ぐらいはおられるのではないかと思っています。


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硝子のジョニー [音楽理論]

ある尺八名人のブログを読んでいたら、「硝子のジョニー」という曲の耳コピのことが書いてありました。

『伴奏は確かに4分の4拍子なのに、歌詞の方が小節の枠に収まらない。それでいてワンフレーズ終わった時には伴奏とピッタリ合っている。難儀な曲だ。 』 というような趣旨のことが書かれています。

アイ・ジョージさんの歌った有名な曲ですからreizanも知っていますが尺八で吹いたことはありません。
興味を持って、手持ちの楽譜を探してみたら載っていました。

譜割りが変わっていて一つの言葉が小節線を跨いでいたり、三連符の二つ目の音符が言葉の始まりだったりしますので確かに耳コピするには難しいだろうと思いました。

リズムだけを追っていくと次のようになります。(破線は小節線です。)

3小節目
------------------
 1拍休み
よ  3分の1拍 
ぎ  3分の1拍 
り   3分の1拍  
にー 1拍+3分の1拍 
ぬ  3分の1拍 
れ  3分の1拍 
------------------
てー 3拍
 1拍休み
------------------

7小節目
------------------
 半拍休み
ジョ 半拍
ニ  半拍
ー  半拍
よー 1拍+3分の1拍
ど  3分の1拍 
こ  3分の1拍 
------------------
に  2拍
ー  2拍
------------------

これは結構面白い構造です。
趣味の尺八サークルでリズムの取り方に慣れていないメンバーのために毎回15分のリズム講座をやっていますが、ちょっと難しい課題として使うため縦譜に直してみました。

硝子のジョニー.jpg

 



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箏の調絃のやり方 [音楽理論]

箏と尺八の合奏で先ず最初に行われるのは箏の調絃です。
合奏練習の時の集合時刻というのは実際には全員による音出し(演奏)開始の時刻を意味していますので、絃方の皆さんは定刻の2、30分前には到着して、調絃をします。

尺八吹きとしては試し吹きをして調子を見たいし管内の温度も上げておきたいところですが、調絃が始まったら静かにしておかなければなりません。それは二本の絃が響き合っているかどうかを聴きながら調絃していく繊細な作業だからです。

その要領を箏の基本的な調絃である「平調子」を例に説明しましょう。
「平調子」の音の間隔は「ミ」からスタートすると、ミ・ラ・シ・ド・ミ・ファ・ラ・シ・ド・ミ・ファ・ラ・シ(それぞれの音律差は、5・2・1・4・1・4・2・1・4・1・4・2)となります。

通常は1絃を「D」か「G」か「C」に取ることが多いです。平調子の音の間隔を守って調絃するとそれぞれの1絃から次のようになります。(一絃は五絃と同音にとる場合が多く、その場合は一絃よりも二三四絃の方が音が低くなります。)

D一の場合:一=D・二=G・三=A・四=B♭・五=D・六=E♭・七=G・八=A・九=B♭・十=D・斗=E♭・為=G・巾=A

G一の場合:一=G・二=C・三=D・四=E♭・五=G・六=A♭・七=C・八=D・九=E♭・十=G・斗=A♭・為=C・巾=D

C一の場合:一=C・二=F・三=G・四=A♭・五=C・六=D♭・七=F・八=G・九=A♭・十=C・斗=D♭・為=F・巾=G

どの調絃であっても、次の順で絃を弾くと「さくらさくら」になります。

七七八- 七七八- 七八九八 七八七六- 五四五六 五五四三-(小文字は半拍)

実際に調絃をしている動画がありました。箏に馴染みの薄い方は次の説明を読んでから動画をご覧になるとわかりやすいと思います。

「平調子」の合わせ方(D一で説明します。)

  1. 一絃。調子笛や尺八の音或いはチューナーでDに合わせる。(2.以降チューナーは使わない。)
  2. 二絃。一と二を同時に弾いて完全五度(D・G)に合わせる。(よく響きあうまで柱の位置を調整する。以下同じ。)
  3. 三絃。一、二、三と順に弾いて完全四度(D・A)に合わせる。
  4. 四絃。四と三を交互に弾いて短二度(A・B♭)に合わせる。
  5. 五絃。一と五を同時に弾いて同音(D)にする。
  6. 六弦。六と五を交互に弾いて短二度(D・E♭)に合わせる。
  7. ここで四絃と六絃のチェックをする。四と六を同時に弾いて完全四度(B♭・E♭)になっているかチェックする。(三と五が完全四度で四と六はそれぞれの半音上なので、四と六も完全四度の関係になっている。)
  8. 六絃までが正確にとれたら、あとはオクターブの関係になっているので次の組み合わせで合わせる。
    七絃:二
    八絃:三
    九絃:四
    十絃:五
    斗絃:六
    為絃:七
    巾絃:八
上の手順で調絃したら一音ずつチューナーで確認をしてはいけません。
何故かというとチューナーの針が中央からずれるからです。それを見て調絃をやり直したら、折角、三分損益法でよく響きあうように調絃したのに、若干の音の濁りは我慢しようという平均律に変わってしまいます。

ピアノの場合は調が変わるごとに調律をするわけにいきません。だから、1オクターブを12等分する平均律で調律しておけば何調に移調・転調してもそのままで対応できるので、多少のハーモニーの濁りは我慢してねという考え方です。

一方、箏の場合は柱を動かすことで簡単に調絃できますので、その利点を活かして、何時でも一番良く響きあうように調絃しない手はありません。
  
https://www.youtube.com/watch?v=hrHu3BJA3eY 伝統音楽デジタルライブラリー
(平調子は、2'00"~3'15")

こちらは少しゆっくり合わせています。確認作業が多すぎる感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=63HpU0810YE 調絃のやり方1

 
なお、繰り返しになりますが調子笛やチューナーに合わせるのは基音とする一音だけです。あとは一番良い響きになるように合わせていきます。純正律に近い調律になります。

もしこれを、13本の絃をすべてチューナーで合わせたら平均律になってしまい、二つ以上の絃を同時に弾いた時、音に濁りが生じてしまいます。

ピアノのように平均律で調律されている楽器はどの調に移調しても対応できるようになっていて便利ですが、多少の音の濁りは我慢しようという割り切りのもとに成立しています。
箏の場合は都度調絃することは不便ですが、反面、濁りのない一番良い響きを得ることができます。まあ、どちらも一長一短があるということです。

reizanは長年三曲を聴いて濁りのない響きに慣れてしまったせいか、最近はピアノの名曲でも音が濁っている(微妙なうなりが生じている)のが気になります。

尺八の裏吹き研究について [音楽理論]

「尺八の裏吹き」といっても怪しいことではありません。

reizanのやっている三曲(箏・三絃との合奏)の場面では使うことはありませんが、民謡の伴奏尺八ではお馴染みの手法です。

伴奏は歌い手の声の高さに合わせないといけませんが、キーの種類は12ですから単純には12本の長さの違う尺八を準備しなければなりません。そういうことは誰でもできるわけではありませんから少ない本数で多くのキーに対応しようというのが裏吹きの目的です。

どうするかというと、例えば一般的には使用する尺八の一番吹きやすいキー(D)で吹きますが、同じ尺八でキーを(A)に変えて(移調して)吹くという方法です。そうすると単純計算で半分の本数で対応することができます。

尺八を吹いている人のあいだでは、このようにロ調子(「ロ取り」とも云う)をチ調子(「チ取り」)にキーを変えて吹くことを裏吹きと呼んでいます。
ロ調子をレ調子(G)に変えたりハ調子(C)に変えたりすることもできるのですがこの場合は裏吹きとは呼ばないようです。

民謡尺八専門の人はなんにも見ずに簡単に裏吹きをされますが、reizanの場合は楽譜を見ながらでないと吹けませんからマジックを見せられているような気持ちになります。
D→A、D#・E♭→A#・B♭、E→B・・・と紙に書いていけばすべてを書き直せるのですが、それを頭の中で換算して移調しながら吹いていくというのは大変そうです。

そこで、簡単に裏吹きができる秘密の方法があるのではないかと思って、表吹きと裏吹きの関係を分析してみました。
本調子、二上り、三下りなどいろいろな曲に出てくる音のパターンを比較しながら、ロ調子に出てくる音を調べました。

そうすると案外簡単な原理だということがわかりました。
民謡も洋楽と同じく1オクターブの中には12の音高がありますが、一曲のなかでその音を全部使うわけではありません。基本的には5音だけです。

ということは、五つのパターンさえ覚えれば良いということになりますから慣れれば頭の中で変換しながら演奏することも可能なような気がしてきました。

今回の研究のまとめは次のとおりです。

裏吹きのコツ.jpg
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民謡の大半は陽旋法ですから赤い線で囲んだ5種類の音で曲が出来ています。それ以外のものは陰旋法の曲だったりして違う音が使われていることがあります。
でも基本の五つだけを押さえておけば、それから半音下がった音とか1音下がった音の名前はすぐに出てきますからあえてほかを覚える必要はありません。

さらに言えば、元々ロ調子をチ調子に変えるのですから、ロ→チは改めて覚える必要もありません。
そうなると覚えるのは四種類です。

五つのパターンの共通点を探してみると、基本音階の下降順ツ・ロ・ハ・チ・レ・ツ・ロを三つずつ切り取って真ん中の音名を除いた組み合わせになっていることがわかります。ただし、チ→ツのツだけがメリ音(琴古流では中メリ)になります。

覚え方のコツは、最初に次の二つを徹底的に覚えます。
  1. ロ→チ
  2. チ→ツのメリ(琴古流ではツの中メリ)
残りはあと三つですが、特殊音符は出てきません。
  • ツ(ロ)ハ   ツ→ハ
  • ハ(チ)レ   ハ→レ
  • レ(ツ)ロ   レ→ロ
ここまでわかると、すっかりできるようになった気分です。分析してみると案外簡単なことでした。

なお、表吹きを裏吹きに直すということは5律下げることになりますから、乙のツがロの大メリとなりこれより下の音は出せません。元譜に乙のツ以下の符があったらオクターブ上げて吹くことを考えたほうが良さそうです。

 



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不思議な和音は気を引くため? [音楽理論]

最近、気になるテレビCMがあります。
「勿体ない、勿体ない、勿体ない」とコールしているauのCMです。

http://www.youtube.com/watch?v=sQOWtZb9WGo au 「モッタイナイ女」篇

音を積み重ねてきれいなハーモニーを作るのかと思ったら、ショップスタッフ役の女性が三つ目の「勿体ない」でずっこけさせてくれます。

最初の「勿体ない」はC音(ハ長調のド)です。次はF音(ファ)ですから、最後にA音(ラ)が出て来て、Fコード(ファ・ラ・ド)の転回形のド・ファ・ラで気持ちよく解決するのかと思ったら、かなり難しいコードで終わります。

実際の音程は、最初にC音で歌いだし、それにF音が乗り、最後がB音です。しかもショップスタッフ役の方は音が揺れていてBとB♭のあいだを行ったり来たりしています。


C・F・(G)・Bと考えれば、CM7sus4のGを省略したものと考えられますし、
C・F・(G)・B♭と考えれば、C7sus4のGを省略したものと考えられます。

厳密に見ていくとB音が始まった時にはF音は消えていますので、「C+F」と「C+B」と「C+B♭」の二重唱が展開されている形です。

それにしても、ショップスタッフ役の方のインパクトは強烈です。この方が普通に歌っていたらありふれたハーモニーになってreizanも注目しなかったと思います。良い意味でしてやられた感が強いです。

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移調検討表 [音楽理論]

reizanが所属している趣味の民謡尺八グループは地域の吟詠協会にも所属していて、年に2回、協会の発表会にも出ています。

詩吟のできる人と詩吟伴奏のできる人がおられますのでその方たちが出演する分には良いのですが、グループの全員で吹ける曲となると民謡や歌謡曲になってきます。

しかしそういう曲をやると、「あのグループは詩吟以外の曲をやった。」と陰口が聞こえてきます。

そこで選んだのが「吟詠歌謡」です。これだと歌謡曲の歌える吟者と尺八全員が出演できます。
吟詠歌謡の典型的なパターンは、歌謡曲の1番と2番の間に詩吟が挟まれています。

次回の発表会では、「富士山」という有名な詩吟をアンコにした「霊山」という曲を取り上げることになりました。

YouTubeの音源から耳コピしようと思ったら素人さんの歌った音程の怪しいものしかなかったので、仕方なくこの曲の入った中古CD(絶版のため定価より少し高かめ)をネットで購入しました。キングレコードの吟詠歌謡特選4「相生舟」というアルバムの3番目が目的の曲です。

届いたCDのケースを開けてみたら歌詞カードにメロディー譜が付いていました。これはラッキーです。あとは前奏と間奏と後奏を耳コピすればよいだけですのでずいぶん楽になります。

さて、これから尺八譜を起こしていくことになるのですが、五線譜をそのまま1尺8寸管に置き換えるだけで済むことは希です。
何故かというと次のような条件に縛られるからです。
  • 半音(メリ音)が多くなると吹きにくい
  • 歌い手の声域を超えると歌えない(曲の最高音を本人がきれいに出せる最高音に合わせると歌が映える。)
  • メンバー全員が持っている1尺8寸管または1尺6寸管で伴奏できるものに限る
これらのことを頭に置いてメモ用紙の上で検討を始めたのですが頭の中が混乱して訳がわからなくなりました。検討のやり直しとなった時にふと思いついたのが「Excelが使える!」です。

ということで作ったのが次の「移調検討表」です。

移調検討表.jpg
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結論から言いますと、3番目の「霊山」は2尺3寸管のキーに移調して、実際の演奏は1尺6寸管で吹きます。(黄色のマーカーの部分)

では、解明の経過を追っていきましょう。

先ずは、#と♭の数の確認です。過去のブロク(ここ)で報告していますように#・♭の数で半音(メリ音)の少ない管長がわかります。
「霊山」の場合は#が一つです。この場合は、「2尺3寸管(ロ=A)」か「2尺1寸管(ロ=B)」に移調するか、「1尺8寸管(ロ=D)」のまま採譜するのと半音(メリ音)の数が最少で済みます。

次に書いているのは曲の中に出てくる最低音と最高音とグループに所属している女性の歌い手さんの出せる最高音です。
曲の最低音と最高音で音域がわかりますが音域はそれほど重要ではありません。

ポイントになるのは最高音です。曲の最高音と歌い手さんの出せる最高音が同じになるのがベストマッチです。
そのための確認をしているのが「移調後の最高音」の欄です。

ここでは指定の管長に移調したときに曲の最高音が都山流尺八譜の音符で何になるかを表示し、それを1尺8寸管と1尺6寸管で吹いた時の音高をアルファベットで表しています。
このアルファベットの音高が歌い手さんの最高音と同じになるか低くて近いものを選びます。

具体的には、aの管長(2尺3寸)の場合は最高音が「チ」になり、これを1尺6寸管で吹いた時の「B音」が歌い手の出せる最高音「C」より半音低くて一番近いので、「霊山」は2尺3寸管のキーで尺八譜を書き1尺6寸管で伴奏するという選択をします。

今回のExcelの使い方は様式を作ってそこに結果を書き込んだのですが関数などは一切使っていません。
ということは白紙の上に同じような表を書いて作ることも可能です。

ではどうやって結果を得ていたかというと、使ったのはreizanが考案した五線譜⇔尺八譜変換器です。
興味のある方はご自身で使い方を考えてみてください。(換算器の紹介記事はここにあります。)

 
 


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民謡の「軽く弾む」はswingと同じだった [音楽理論]

知り合いの作曲家さんが作曲して7月に初出版された混声合唱曲の楽譜を入手しました。

曲目は、「系図」と「黒いゴムマリの歌」の2曲です。

RIMG1964.JPG

reizanはもっぱら演奏する方で歌うのは苦手ですが、応援している作曲家さんの楽譜なので記念に持っておきます。

「系図」の歌詞は芥川賞作家の三木卓さんの詩です。フォークシンガーの高田渡さんが歌った同名の曲がありますが同じ詩が元になっています。

https://www.youtube.com/watch?v=vbEbPbQ5RMc YouTube 高田さんの歌

https://www.youtube.com/watch?v=t9ovgIHtI6I YouTube 安藤さんの曲

どちらも、それぞれの個性というか味わいがあって好きです。

安藤さんの方を舞台で歌った合唱団のメンバーの人から聞いた話ですが、「系図」を歌っている時に泣いているお客さんが舞台上から見えたそうです。
reizanはちょっとコミカルな曲という印象を持っていましたが、その方はきっと自分の人生に重ね合わせて思い出すシーンがあったのでしょう。

「黒いゴムマリの歌」は吉行理恵さんの詩です。吉行さんも芥川賞作家です。

https://www.youtube.com/watch?v=poLXlhVbT30 YouTube 黒いゴムマリの歌

ところで、「黒いゴムマリの歌」の楽譜を見ていて気づいたのですが、譜頭に記載されたリズム指定はreizanがやっている民謡尺八の分野で言っていることと似ています。

民謡尺八では、「軽くはずむ」というリズム指定をされているものがこれにあたると思います。

「軽くはずむ」と指定されたら、

八分音符×2.jpg
これを譜の通りに吹いてはいけません。この通りに吹くとちっとも弾まないからです。

親切な音譜になると、弾む意味で上の譜をこう書いてくれています。
付点八分+十六分.jpg
でも、これもこの通りに吹いたら弾んでいるのとはちょっと違ったリズムになります。前の音が長すぎて後の音が短いのです。

民謡で弾むのも実は3連符で、最初の音は3分の2拍の長さ、後の音は3分の1拍の長さで演奏すると弾みます。

これが、「黒いゴムマリの歌」のリズム指定と同じだったので驚いています。

RIMG1965.JPG

民謡では「軽くはずむ」と言いますが、五線譜では「Swing」になるんですね。

洋の東西を問わず、弾む時は3連符になるのが面白いと思いました。


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平均律と三分損益法 [音楽理論]

reizanが所属している趣味の民謡尺八サークルで、以前に経験した出来事です。

箏の調絃が始まったので、「調絃の邪魔になるから尺八を吹くのはやめましょう。」と気を利かして声をかけたら、
他のメンバーから、「チューナーとクリップ式チューナーマイクを使ってるから大丈夫だよ。」と指摘されました。

確かにクリップ式チューナーマイクであれば、箏の龍角の部分を挟んでその振動音を拾いますから外部の音の影響を受けにくいのは知っていますが、まさかチューナーを使っているとは思っていなかったのでそのことに驚いてしまいました。

尺八が大勢の場合、宮音(基本になる音)を尺八音に合わせずに調子笛やチューナーでとることがありますが、全部の絃をチューナーで合わせる場面にその時初めて遭遇しました。

箏の調絃は中国発祥の三分損益法(日本では「順八逆六」と言い手順が若干異なりますが結果は同じ)という原理に基づいています。

箏のどれか一本の絃を例にしてみましょう。
絃の真ん中あたりに柱を立て、龍角(右端のフレット)から柱までの長さを測ります。
次に、龍角からその長さの三分の二の位置に柱を移動します。二つの長さの比は3:2です。そうすると柱を移動した後の音は元の長さで出した音の完全五度上の音になります。それも平均律ではなく純正律に近い完全五度です。

今度は元の長さに、その三分の一を足した長さの位置に柱を移動させます。二つの長さの比率は3:4です。
この時の音は元の長さの音の完全四度下の音になります。勿論、この音も平均律ではなく純正律に近い完全四度です。

これを繰り返して1オクターブの中に12の音を作るのが三分損益法です。この調絃で得られた音の組み合わせで協和音を鳴らすと、ほとんどうなりのないきれいなハーモニーが聞こえます。

最近も箏の方が、ロ一(基本の音が「D」)の平調子をすべてチューナーで合わせているのに遭遇して驚きました。
その時の曲は「花かげ」という曲です。次の音源は箏独奏ですから合奏の場合のうなり音は確認できませんが、実際に尺八で合わせると三分損益法で調絃した方がうなりがなくて気持ちが良いです。

また、耳の良い人であればメロディーが若干異なっていることに気づかれると思います。(テンポが異なるのは生演奏のためですので無視してください。)
普通の耳をお持ちの方のために、最初の2小節を例に説明させていただきます。

その部分の歌詞は、「じゅ・うー・ご・|お・き・・ん」です。このなかで赤色の部分の音が特に違っています。


《チューナー合わせ》


《三分損益法》


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音譜解析(「初鶯」の鴬の谷渡り研究) [音楽理論]

「初鴬」とは、宮城道雄が作曲した箏(本手・替手)、尺八合奏の難曲です。前にも一度演奏会に参加するため勉強したことがありますが、その時は公刊譜を見ながらひたすら音源と合わせる練習をしました。

そして今度の合奏講習会でも課題曲として「初鴬」tが取り上げられています。
久しぶりに吹く曲ですから予習の意味で音源と合わせたらギクシャクしたので、この曲の中でも特に合わせにくい「鴬の谷渡り」という部分をExcelで小節線のない尺八譜に書き換えて分析してみました。

初鴬.jpg

公刊譜では小節線の関係でタイのかかった音符がたくさん出てきます。それも小節線の前の十六分音符と小節線の後ろの十六分音符がタイのカッコでつながっているという具合です。かなり見にくいのですが小節線を取ってしまえば小節線の前後の音は八分音符1個にまとめられます。

その他にも纏められるところはまとめたのが上の音譜です。

これを作ってみてわかったのですが、赤丸印の十六部音符がキモでした。最初の赤丸の前までは音符が拍のリズムにあっているのでわかりやすいのですが、最初の赤丸の音符以降は拍から四分の一拍ずつずれて進行します。

それが二つ目の赤丸印の十六部音符まで来たところで、ようやくズレが解消されます。

他の方がどういう解釈で演奏されているかわかりませんが、reizanには四分の一拍ずれたままで演奏するだけの器用さがありません。最初の赤丸の音符の次から拍が始まるものと看做して拍を取り直して、次の赤丸のところで再び拍を取り直すというやり方でいこうと思います。


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ゴマ譜のことが少し分かった気がします [音楽理論]

reizanが所属している都山流は明治時代になって流派を興したため、音譜は日本式の縦書きのタブ譜でありますが洋楽の要素が取り入れられています。

それは具体的には、運指と音価をベースにして音譜が書かれているということです。また、五線譜と同様に小節線も書かれていますが、それは当初からのことではないようです。

運指はカタカナの音符(ロ・ツ・レ・チ・ハなど)で示され、音価は音譜の右側に書かれた傍線によって音の長さが示されています。

音符と音価の例.jpg
《都山流の音符と音価の例》

 

一つの音符の横に一本の線があるのは四分音符です。上の例のほかにも音符だけで傍線がない場合は二分音符などといくつかの約束事があります。

一方、琴古流の音譜は一般に胡麻譜と呼ばれています。こちらもロツレチの縦譜ですが都山流とは見た目が違います。

琴古譜の音符の左右に付いている点が胡麻のように見えることから胡麻譜と呼ばれています。右側が表拍の打ち始め、左側が裏拍の打ち始めです。

尺八譜比較.jpg
《都山・琴古の比較譜》

琴古流の場合は中央に線が引かれていて、一本は半拍、二本は四分の一拍です。「ゝ」の記号はその前の音符と同じ運指ということを表しています。
上の譜では両方とも全く同じ旋律です。五線譜で表すと次のようになります。(古曲の場合、小節の概念はありません。)

五線譜.jpg

5つ目の音符を見ると、五線譜では半拍のD音です。上の都山譜でも半拍の「ロ」(D音)です。
ところが、琴古譜では二本線が5つ目の音符にまでかかっています。9つ目の音(「リ」)も半拍のはずが、四分の一拍を表す二本線が引かれています。

このことについて琴古流に詳しい方にお尋ねしてようやく理屈がわかりました。

reizanは五線譜の概念で琴古流の音譜を見ておりましたがそれが間違いのもとでした。
五線譜では符頭(たま)と符幹(棒)と符尾(はた)、都山譜では音符と傍線の組み合わせの一つひとつがそれぞれの音高(尺八では運指)と音価(音の長さ)を表していますから、琴古譜でも同じだろうと思っていたわけです。

その為しばらくは説明してくださることが理解できずちんぷんかんぷんでしたが、核心に行き着いたところでようやく琴古譜の意味がわかりました。

それは、「音価」に重点を置くか、「間」に重点を置くかの違いでした。
五線譜や都山譜は音価をつなぐことで成り立っていますが、琴古譜の場合は間をつなぐことで成り立っているのでした。

つまり、琴古譜では前の音から次の音までのあいだにどれだけの「間」があるかを表示しているのです。
どちらも同じことのように思えますが実際は違います。

音価重点の場合はその音符だけで求められている音の長さがわかりますが、間を重点にしている場合はその音符と前後の音符の関係を見ていかないと求められている音の長さがわからないのです。

ですから、上の例の4つ目の音から5つ目までの間は四分の一拍ですから二本線がかかっていて当然ということになります。

ただし、9つ目の「リ」のように二本線が音符全体にかかってしまうと見分けにくいということで、琴古流のなかでも、ある派では9つ目の音符に接するところまでは二本線で音符の上は一本線を書くというやり方のところもあります。

今回、琴古譜が「間」を重視しているものだということがわかって頭の中がすっきりしました。

 



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「アイスクリーム」と「アイスクリン」 [音楽理論]

タイトルは「アイスクリーム」ですが今回は料理の話ではなくて音楽の話です。

尺八の音譜(楽譜)は、三曲の場合はほとんど公刊譜を購入します。その他の楽曲(歌謡曲、ポップスなど)の場合は手持ちの楽譜集(五線譜書き)を縦譜に書き直しています。

そして楽譜集にないときは耳コピをします。でも、なかには耳コピしにくい曲もあります。そんな時はYAMAHAの「ぷりんと楽譜」から購入します。

http://www.print-gakufu.com/ ぷりんと楽譜

reizanはネット経由クレジットカード支払いで購入し自宅のプリンターから出力していますが、コンビニのマルチコピー機でも購入できるようです。

笠置シズ子さんの歌唱で有名な服部良一さん作曲の「東京ブギウギ」を趣味の民謡尺八サークルの皆さんと演奏しようと思ったのですが、手持ちの楽譜集になくて、reizanにとって耳コピしにくい曲だったので「ぷりんと楽譜」を利用しました。

東京ブギウギ_0001.jpg

楽器別にたくさんのアレンジがありますが、楽譜サンプルを開いてみて2番目の「メロディー」の分を購入しました。価格も一番安くて162円でした。

東京ブギウギ.png
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楽譜を見たら五線譜の上に次のような表示がありました。
スウィング.jpg
五線譜で左のように書かれているところは右のように演奏してくださいという指示です。縦譜の場合に言葉で「軽くはずむ」と書かれているのと同じ意味です。

スウィングしてくださいということなのですが、70代、80代の高齢者の方にとってはちょっと苦手な部分みたいです。

そこで、リズムを言葉で理解してもらうことはできないかと考えてみました。
4文字で、「〇ーー△」のように、2文字目と3文字目が長音になる言葉が良いのですが、見つけきらなかったので「クリーム」という言葉を使うことにしました。

これの前にアイスをつけて「アイスクリーム」です。この言葉が使えるのは、物売りのときに「アイスクリン」と短縮形で使われたことがあったからです。
世の中に存在しない言葉で説明しても混乱を招くだけですから、ここは慎重に選びました。

楽譜のイントロの部分は次のようになっています。

アイスクリン.jpg
1小節の中に同じフレーズが繰り返されていますから2拍目までが出来れば全部ができることになります。

♭が三つもついて面倒そうですが、縦譜に直したら運指を表すタブ譜になりますのでその点は心配ありません。
問題はリズムです。

基本的なことですが1拍の長さ(時間)はすべて同じです。このことを忘れるとぐちゃぐちゃになってしまいますから、ずっと意識しておいてください。

1拍目は3連符ですから、音符1つの長さは3分の1拍です。この3つの音符に「アイス」の言葉を当てます。
「アイス」と発音するときに、「アイスー」とか「アイース」とか「アーイス」と発音をする人はいないと思います。1拍の時間の中で普通に「アイス」と発音すれば3連符になっているのです。

2拍目をスウィングしないで普通に演奏する場合は「クリーム」の言葉を割り当てられます。付点八分音符が「クリー」で、十六分音符が「ム」です。
この場合は1拍の時間の中で4文字の発音をしますから、1文字当たりは4分の1拍になります。「クリー」が4分の3拍で「ム」が4分の1拍です。「クリーム」と発音すれば自然にそうなっているのです。
ただし、漫然と「アイスクリーム」と発音したのでは音楽になりません。3文字で1拍と4文字で1拍ですから前者と後者では1文字当たりの時間の長さが異なります。
拍を取りながら、「アイス」で1拍、「クリーム」で1拍を正確にできないといけません。文章にすると難しいように思いますがやってみると実際は簡単です。

さて2拍目で横道にそれましたが、本来のスィングする方の説明をさせていただきます。こちらは簡単です。要はこちらも3連符なのですがそういう譜の書き方をすると全体が3連符だらけになって見づらいので十六分音符ベースで書いているだけです。
そしてそのことを譜頭で説明しているのです。

2拍目を演奏するときは、「クリーム」ではなく、「クリン」の言葉を当てます。付点八分音符が「クリ」で、十六分音符が「ン」です。
本来の音価(音の長さ)とは異なりますが、付点八分音符が3分の2拍、十六分音符が3分の1拍ということで割り切って演奏しましょうということです。この本来と違うというところが真面目な方にはなかなか受け入れがたいことのようですが、本来というのも真理を表しているわけではありませんので、ここは臨機応変に受け入れていただいた方が演奏を楽しめると思います。

1拍目2拍目を通すと、「アイスクリン」になります。この場合1拍に3文字ずつですから1文字ずつの長さはすべて同じです。そのまま読むだけで良いのですから簡単です。20歳以上の人の場合は「夏はビール(ナツハビール)」でも良いかもしれません。

この言葉を「タ」に置き換えると「タタタタータ」になります(ちなみに同じ譜を弾まないで演奏するときは「タタタターータ」になります。)。普通はこれでリズムを確認しています。適当にやっているわけではなくて、上記のような理屈を踏まえたうえでやっているのです。




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尺八合奏のために和音の構成を調べてみました [音楽理論]

最近、尺八合奏の手付に手を染めるようになったのですが、学校で音楽教育を受けたのは中学校までですから和音のことになるとちんぷんかんぷんです。

例えば三和音の「メジャー」(和名:長三和音)の構成は「長三度+短三度」と説明されています。これがさっぱりわかりません。

調べてみたら「何度」という時の数え方は、根音(基音)を1と数え、それから線と間ごとに1ずつ加算していきます。

「ド」を根音にした場合「ソ」は、「ドレミファソ」で5番目だから五度になります。「シ」を根音にしてその上の「ファ」も「シドレミファ」で5番目だから五度になります。
ところが、ピアノをイメージしていただくとわかりやすいのですが、「ド」から「ソ」の間で黒鍵がないのはミとファの間だけですが、「シ」から「ファ」ではシとドと間とミとファの間の二か所に黒鍵がありません。

だからどちらも五度と言いながらまったく同じというわけではありません。
これを区別するために前者を「完全五度」、後者を「減五度」と呼ぶことになっています。

これが楽理上の約束事なのですが、尺八に置き換えて考えようとすると行き詰ってしまいます。
何故かというと尺八譜は五線譜ではないからです。
五線譜では線と間を見ていきますが、尺八譜は五線の概念がなく単に半音を積み上げているだけですから、音と音の間隔を何度という風に言ってもピンとこないのです。

それに根音を1と数えてしまうのもなじみません。尺八の場合は根音から対象音まで間は半音幾つ分かという言い方の方がわかりやすいのです。

そこで、基本的な和音について尺八の筒音である「ロ音(D)」を根音として調べて一覧表にしてみました。

尺八のための基本的な和音区分.png
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例えば「Dm」(Dマイナー)を3本の1尺8寸管で吹く場合を見てみましょう。根音は「ロ(D音)」です。そして第2音は3半音上の「ツ(F音)」(表では「レの大メリ)」と表示)で、第3音はさらに4半音上の「チ(A音)」となります。
三人が同時に「ロ」「ツ」「チ」を吹くとそこにできる和音は「Dm」(Dマイナー)になります。そういうことがわかる表です。


上の表の黄色で塗った部分を使えば、他の音を根音にした場合の組み合わせも簡単に導き出すことができます。

マイナー三和音( )内は琴古流
             根音+3半音+4半音
  • Cm     ハ(リ) ・ ツの半音(ツの大メリ) ・ レ
  • D♭m   ロの半音(ロの中メリ) ・ ツのメリ(ツの中メリ) ・ チの半音(ウ)
  • Dm     ロ ・ ツ ・ チ
  • E♭m   ツの半音(ツの大メリ) ・ レの半音(レの中メリ) ・ ハの半音(リの大メリ)
  • Em     ツのメリ(ツの中メリ) ・ レ ・ ハのメリ(リの中メリ)
  • Fm     ツ ・ チの半音(ウ) ・ ハ(リ)
  • G♭m   レの半音(レの中メリ) ・ チ ・ 甲ロの半音(ロの中メリ)
  • Gm     レ ・ ハの半音(リの大メリ) ・ 甲ロ
  • A♭m   チの半音(ウ) ・ ハのメリ(リの中メリ) ・ 甲ツの半音(ツの大メリ)
  • Am     チ ・ ハ(リ) ・ 甲ツのメリ(ツの中メリ)
  • B♭m   ハの半音(リの大メリ) ・ 甲ロの半音(ロの中メリ) ・ 甲ツ
  • Bm     ハのメリ(リの中メリ) ・ 甲ロ ・ 甲レの半音(レの中メリ)


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取りあえずやってみるのがreizan流 [音楽理論]

三日前の稿で、五線譜で尺八を吹くときの難しさを報告しましたが、試しに移調譜を作ってみました。

使用したのはフリーソフトの「MuseScore」です。こういうソフトの便利なところは、作った楽譜をパソコンが演奏してくれることです。これは入力ミスのチェックに強い力を発揮してくれます。

曲は著作権の消滅している「春の海」にしました。

市販されている「春の海」の五線譜はフルートを対象としているので実音表記です。
尺八の出だしの音は装飾音符がついていて、音高はDとEになります。

春の海(実音).png
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この曲を1尺8寸管で吹こうとすると運指上難しい箇所がたくさんあります。ところが1尺6寸管で吹くと難しくさが半減します。
それに、この曲の陽光にきらめく瀬戸内の海の明るいイメージの音色を得ようとすると1尺8寸管では無理があります。

Eの音は、1尺8寸管で「ツのメリ(琴古流でツの中メリ)」、1尺6寸管で「ロ」の運指で吹けば同じ高さの音が出ますが音色は異なります。
どちらかというと1尺8寸管は田舎っぽい音、1尺6寸管は明るく都会的な音のイメージになります。

だから、「春の海」は1尺6寸管で吹くものですが、実音表記の五線譜を見ながら吹くのはちょっと難しいです。
そこで必要になるのが1尺6寸管用に移調した「移調譜」です。
でもそんなのは売っていませんから自分で作ってみました。

「春の海」(移調譜 1尺6寸管).png
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この移調譜では、出だしの音がCとDになります。実音より一音低いのですが、1尺8寸管より一音高い1尺6寸管で吹けば実音の高さになります。

移調譜の下第一間と第四線の音符の運指はどの長さの尺八で吹いても「ロ」です。この約束事のお蔭でどの長さの尺八でも五線譜を見て運指ができます。

これを作ったことによってMuseScoreの使い方も分かってきました。3連符の入力やタイやスラーの掛け方など普通に五線譜を作るときに必要なことはほぼマスターしました。

ただ、どうしても出来ないことがあることも分かりました。速度用語と発想用語がないのです。
まあタダだから仕方ないです。


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