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箏の調絃のやり方 [音楽理論]
箏と尺八の合奏で先ず最初に行われるのは箏の調絃です。
合奏練習の時の集合時刻というのは実際には全員による音出し(演奏)開始の時刻を意味していますので、絃方の皆さんは定刻の2、30分前には到着して、調絃をします。
尺八吹きとしては試し吹きをして調子を見たいし管内の温度も上げておきたいところですが、調絃が始まったら静かにしておかなければなりません。それは二本の絃が響き合っているかどうかを聴きながら調絃していく繊細な作業だからです。
その要領を箏の基本的な調絃である「平調子」を例に説明しましょう。
「平調子」の音の間隔は「ミ」からスタートすると、ミ・ラ・シ・ド・ミ・ファ・ラ・シ・ド・ミ・ファ・ラ・シ(それぞれの音律差は、5・2・1・4・1・4・2・1・4・1・4・2)となります。
通常は1絃を「D」か「G」か「C」に取ることが多いです。平調子の音の間隔を守って調絃するとそれぞれの1絃から次のようになります。(一絃は五絃と同音にとる場合が多く、その場合は一絃よりも二三四絃の方が音が低くなります。)
D一の場合:一=D・二=G・三=A・四=B♭・五=D・六=E♭・七=G・八=A・九=B♭・十=D・斗=E♭・為=G・巾=A
G一の場合:一=G・二=C・三=D・四=E♭・五=G・六=A♭・七=C・八=D・九=E♭・十=G・斗=A♭・為=C・巾=D
C一の場合:一=C・二=F・三=G・四=A♭・五=C・六=D♭・七=F・八=G・九=A♭・十=C・斗=D♭・為=F・巾=G
どの調絃であっても、次の順で絃を弾くと「さくらさくら」になります。
七七八- 七七八- 七八九八 七八七六- 五四五六 五五四三-(小文字は半拍)
実際に調絃をしている動画がありました。箏に馴染みの薄い方は次の説明を読んでから動画をご覧になるとわかりやすいと思います。
「平調子」の合わせ方(D一で説明します。)
- 一絃。調子笛や尺八の音或いはチューナーでDに合わせる。(2.以降チューナーは使わない。)
- 二絃。一と二を同時に弾いて完全五度(D・G)に合わせる。(よく響きあうまで柱の位置を調整する。以下同じ。)
- 三絃。一、二、三と順に弾いて完全四度(D・A)に合わせる。
- 四絃。四と三を交互に弾いて短二度(A・B♭)に合わせる。
- 五絃。一と五を同時に弾いて同音(D)にする。
- 六弦。六と五を交互に弾いて短二度(D・E♭)に合わせる。
- ここで四絃と六絃のチェックをする。四と六を同時に弾いて完全四度(B♭・E♭)になっているかチェックする。(三と五が完全四度で四と六はそれぞれの半音上なので、四と六も完全四度の関係になっている。)
- 六絃までが正確にとれたら、あとはオクターブの関係になっているので次の組み合わせで合わせる。
七絃:二
八絃:三
九絃:四
十絃:五
斗絃:六
為絃:七
巾絃:八
何故かというとチューナーの針が中央からずれるからです。それを見て調絃をやり直したら、折角、三分損益法でよく響きあうように調絃したのに、若干の音の濁りは我慢しようという平均律に変わってしまいます。
ピアノの場合は調が変わるごとに調律をするわけにいきません。だから、1オクターブを12等分する平均律で調律しておけば何調に移調・転調してもそのままで対応できるので、多少のハーモニーの濁りは我慢してねという考え方です。
一方、箏の場合は柱を動かすことで簡単に調絃できますので、その利点を活かして、何時でも一番良く響きあうように調絃しない手はありません。
こちらは少しゆっくり合わせています。確認作業が多すぎる感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=63HpU0810YE 調絃のやり方1
なお、繰り返しになりますが調子笛やチューナーに合わせるのは基音とする一音だけです。あとは一番良い響きになるように合わせていきます。純正律に近い調律になります。
ピアノのように平均律で調律されている楽器はどの調に移調しても対応できるようになっていて便利ですが、多少の音の濁りは我慢しようという割り切りのもとに成立しています。
箏の場合は都度調絃することは不便ですが、反面、濁りのない一番良い響きを得ることができます。まあ、どちらも一長一短があるということです。
reizanは長年三曲を聴いて濁りのない響きに慣れてしまったせいか、最近はピアノの名曲でも音が濁っている(微妙なうなりが生じている)のが気になります。
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